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2021-06-08

オンプレへの回帰は本当に正しい道なのか? 新旧システムの二重管理に苦しむIT部門。そのシンプルな解決方法とは

By NTTコミュニケーションズ株式会社

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災害対策・バックアップ対策IT運用コストと運用負荷軽減これからクラウドへ取り組むマルチクラウドアプリケーション仮想化ストレージバックアップハイブリッド クラウド

9割以上の企業がDXに取り組めていない。その背景は

経済産業省が 2018 年に公開した「DXレポート」では、既存システムがデジタルトランスフォーメーション(DX)の障壁となることに対して警鐘を鳴らした。その発行から2年以上が経過するが、まだその道のりは遠い。2020年に公開された「DXレポート2(中間とりまとめ)」では、実に9割以上の企業がDX にまったく取り組めていない(DX 未着手企業)レベルか、散発的な実施にとどまっている(DX 途上企業)状況であることが明らかになった。

ただし、潮目も変わりつつある。そのきっかけは、新型コロナウイルスだ。この突然の危機による環境変化に対応できた企業と、対応できなかった企業の差が拡大しているのだ。DXレポート2でも、「変化に迅速に適応し続けること、ITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革すること」がDXの本質であり、企業の目指すべき方向性だとしている。

いかに変化に迅速に対応できるシステムを構築するか――。これは、言葉で言うほど簡単ではない。企業には、基幹システムを中心としたモード1(SoR、守りのIT)と、柔軟性やスピードを重視するシステムのモード2(SoE、攻めのIT)があるが、その分断が起きているからだ。変化に迅速に対応するには、「守りのIT」と「攻めのIT」の間で分断のないシステム運用が非常に重要である。しかし現実には、モード間のシステム連携、相互運用性は、大きな課題として残っている。

なぜ分断が起きているのか。その大きな理由は、既存システムが受発注、在庫管理、物流など顧客や取引先を含むサプライチェーン全体の活動を支えているからだ。システムが止まればビジネスも止まる。影響範囲が広いため、簡単には変えにくい。そもそも日々の運用に忙しく、レガシー脱却を考える余裕もない。

仮にこれを乗り越えたとしても、その次には「移行の壁」が立ちはだかる。サーバーやストレージは仮想化している企業が多いが、バージョンやハードウエアの違いを調べ、移行計画を立て、稼働検証まで行う必要がある。ビジネスを止めるわけにはいかないので、うまくいかないことも見越して切り戻しの手立ても考えなければならない。

その結果、変革を目指したもののオンプレミスに回帰したり、データ統合が困難なためレガシーを捨てきれず新旧システムを“二重運用”したりする企業もある。

こうした立ちはだかる「壁」を乗り越え、ニューノーマル時代に応えられるシステムに挑むにはどうすべきか。そのためのアプローチを考察していく。

移行が容易でクラウドとも連携しやすい選択肢とは

レガシー脱却の方法には、いくつかのアプローチがある。例えば、オンプレミスを継承し再構築するのも1つの手だが、この方法は構築の手間とコストが膨大でリスクも大きい。オンプレミスで運用するため、IT部門の負担も高止まりしたままだ。

基幹系の基盤にパブリッククラウドを採用する方法もあるが、顧客の個人情報や契約関連の重要情報を外部に預けることになる。セキュリティや情報保護には強靭な対策が必要だ。それでも会社のポリシー上、移行が難しい場合もある。

パブリッククラウドへの移行を断念し、自社専用で構築・運用する「プライベートクラウド」を選択する企業も少なくない。クラウドネイティブな技術をベースにしているため、柔軟性・拡張性が高く、ほかのクラウドサービスとも連携しやすいからだ。重要情報は自社専用設備で管理するため、情報保護も徹底できる。

しかし課題も残る。自社で運用管理を行うため、運用管理の負担を劇的に軽減することは難しい。また、初期投資の面で大きな費用負担につながるリスクもあるからだ。

このような課題を解決し、プライベートクラウド(自社構築/オンプレミス環境)とパブリッククラウドの“いいとこ取り”を実現する方法はないか――。このような考えのもとNTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)が開発したのが「NTT Communications IaaS powered by VMware®」(以下、IPV)である(図1)。

図:IPVの機能全体像

図1: NTT Communications IaaS powered by VMwareの機能全体像

VMware vSphere®仮想基盤に加え、ファイアウオール、ロードバランサなどのネットワーク系サービス、データの保存・利活用基盤となるストレージまでトータルに提供する

写真
NTTコミュニケーションズ株式会社
プラットフォームサービス本部
データプラットフォームサービス部
SDPFエンジニア
高橋 純氏

NTTコムは2007年から10年以上にわたり、VMware社と緊密な協業を進めてきた。クラウドサービス「Enterprise Cloud」の提供を通じ、日本国内だけで3万VMに及ぶ基盤運用実績を有する。これは世界でも最大級の規模だ。その実績と経験を基に、Enterprise Cloudを発展させたマネージド型プライベートクラウド基盤がIPVである。

「自前で構築・運用されていたオンプレミスシステムやオンプレミス環境で構築されていたプライベートクラウドに比べ、IPVはパブリッククラウドのように最小構成から利用を開始できるので初期投資コストを大幅に抑えられます。また、オンプレミスからIPVへの移行も短期間で容易に実現させる機能も実装済みです」とNTTコムの高橋 純氏は話す。

Enterprise Cloudは次世代プラットフォーム「Smart Data Platform」(以下、SDPF)を構成するコンポーネントの1つでもある。SDPFはDXを推進するための多彩な機能・サービスを実装する(図2)。当然、IPVはSDPFとシームレスに連携が可能だ。つまり、冒頭に触れたモード1とモード2の分断を回避し、相互運用性を確立することができるわけだ。

図:SDPFの全体概要とIPVの位置付け

図2: SDPFの全体概要とIPVの位置付け

SDPFはDXに必要な機能をICTインフラも含めてワンストップで提供する次世代プラットフォーム。プライベートクラウドに位置するIPVを軸にしたハイブリッドクラウドを実現したり、多彩な機能・サービスを活用したりしてDXを推進していくことができる

使いやすさと基盤の価値を向上させる3つの特徴

IPVはオンプレミス、クラウド基盤で広く利用されるVMware vSphere仮想基盤をベースとするサービス。VMware ESXi™やVMware Cloud Director®をはじめとする最新テクノロジーを最大限に活用している(図3)。

図:多様なニーズに対応するIPVの特長

図3: 多様なニーズに対応するIPVの特長

最新テクノロジーの活用により、1VMから利用を開始できる。バックアップやマイグレーション機能、DR機能なども既に組み込まれている。ネットワークの仮想化、閉域網を活用したワークロード移行にも柔軟に対応可能だ

そのIPVには、ほかのクラウドサービスにはない4つの特徴がある。1つ目は「1VMから利用できる」こと。「現在のオンプレでの運用が多いVMwareテクノロジーを活用したクラウドプロバイダーは複数存在します。しかし、そのほとんどが専有型提供のため、小規模からのスタートや小規模システムにはコストパフォーマンスが合わないのが実情です。また、パブリッククラウドでも同様にVMwareテクノロジーをベースとしたサービスがありますが、やはり一定以上のVM利用を想定しています。その点、IPVは最小1VMから利用を開始でき、1VM単位で拡張が可能です」と同社の吉澄 賢氏は語る。

これを可能にしたのは、多くの顧客ニーズに対応するためだ。Enterprise Cloudのボリュームゾーンは100VM未満だが、案件数の75%以上を10VM未満が占める。このシステム個別規模でクラウドへ預ける規模感へのニーズに対応しなければ、利用企業のDX戦略に貢献することは難しい。

「オンプレミスのリソース不足を補い、一部のシステムや検証・開発環境に利用する環境が重要だと考えました。その点、IPVなら少数VMの利用ニーズに柔軟に対応でき、コストも最適化できます」と高橋氏はメリットを述べる。

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NTTコミュニケーションズ株式会社
プラットフォームサービス本部
データプラットフォームサービス部
SDPFエンジニア
吉澄 賢氏

2つ目の特徴は「煩雑な運用管理から脱却できる」こと。インフラ機器、ハイパーバイザーの運用管理はNTTコムが一括対応する。「お客様はDXの実現に向けた優先業務に集中できるようになります」と吉純氏は述べる。

そして3つ目が「既存VMware vSphere環境とつなぎやすい」こと。IPVは多彩なVMware製品で構成され、バックアップやマイグレーション機能、DR機能なども既に組み込まれている。スモールスタートから段階的に移行していけるため、プロジェクトが組み立てやすい。またオンプレミスとの互換性・継承性を重視しつつ順次システムをクラウドに最適な環境へ変更していくリフト&シフト、オンプレミスVMware vSphere環境の全面的な移行にも対応可能だ。

既存の環境の繋ぎやすさという観点でいえば、IPVをシステム基盤として活用するのではなく、バックアップ保管先として活用することもできる。例えば、NTTコムのVPNネットワークやFlexible InterConnectとオンプレミスを接続することで、ネットワーク経路や保管先も含め、閉域環境のためセキュアにバックアップができるのだ。

そして、最後の4つ目の特徴が、「コストメリットが高い」こと。IPVはオンプレミスとのリソースの“出し入れ”で課金されないからだ。送受信するリソースの頻度や容量に応じて課金されると、コストが想定以上に膨らむことがある。IPVはそうした心配が要らない。「中長期的に使い続ければ、大きなコスト削減効果を実感できるでしょう」と高橋氏は話す。

広がりを見せるレガシー脱却のユースケース

既に多くの企業がDX推進基盤としてIPVの活用を検討している。

オンプレミスVMware vSphereの大規模かつ全面的な移行用途はその1つだ。ある大手化学企業はEOLを機にオンプレミスVMware vSphereを“まるごと”移行し、約1000VMをIPVで稼働している。大手デベロッパーでもオンプレミスを全面移行し、約200VMをIPVにアウトソーシングしたことで、運用管理を効率化のみならずDXに向けた取り組みも加速したという。

新規サービス基盤として活用するケースもある。ある大手メーカーは建設業界向けの「写真クラウド」をIPVで実現した。撮影した工事写真をクラウドで自動分類・管理することで施工管理を効率化し、作業工数の削減につながる。アイデアを素早く形にできたのは、IPVの活用によるところが大きい。

Microsoft 365との連携基盤として活用する企業も多い。IPVにはMicrosoft 365への認証ゲートウエイ機能があり、FICと連携することで、オンプレミスのActive Directory認証でMicrosoft 365にアクセスできるため、まずMicrosoft 365との連携基盤としてスモールスタートし、段階的に基幹系システムをIPVに移行していく企業も増えつつある。

オンプレミスのリソース補完やファイルサーバーのDR基盤としてのニーズも高い。自社でバックアップ設備を持つ必要がなく、リストアも効率的に行えるため、障害・災害発生時の事業復旧が迅速になり、最適なコストでBCP対策を強化できる。「SDPFのストレージ機能である『Wasabiオブジェクトストレージ』を利用すれば、大規模DR用途にも柔軟に対応し、コスト削減効果も高まります」と吉澄氏は述べる。

今後、NTTコムではSDPFのデータマネジメント機能の強化、データ移行作業を効率化するデジタルワーカーの開発、データベースのコンバートや監査を効率化するサービス、セキュリティ強化のためのサブセット拡充などを進め、SDPFとの組み合わせによるDXソリューションとしての提案を強化していく考えだ。

※本記事は、日経xTechActiveにて2021年2月より掲載された記事の転載です。

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