インフラのリソースや構成変更を柔軟に行い、かつハードウェアなどの運用負荷を低減できるのがパブリッククラウドの魅力です。しかしハードウェアから上位の層の管理をいきなり自社で対応するのは難しいでしょう。「データセンターにインフラを構築し、事業者へ運用管理を任せていた高い信頼性を維持しながらクラウドの柔軟性を享受したい」。こうしたニーズに応えるのが、日立製作所によるVMware vSphere® ベースのマネージドクラウドソリューション「エンタープライズクラウドサービス G2」です。
オンプレミスに既存のVMware vSphere 環境を構築している企業にとって、パブリッククラウド上にも同様の環境を構築し、統合的にインフラを管理したいというニーズが高まっています。VMwareではさまざまなパブリッククラウドベンダーと協業し、パブリッククラウド上にVMware vSphere 環境を構築するソリューションを提供しています。しかし、長くオンプレミスで同環境を運用してきた企業の中には、こうしたパブリッククラウドを使いにくいと感じるケースは少なくありません。
例えば、VMwareの仮想化技術ベースの既存のプライベートクラウド環境を、データセンター(DC)事業者のハウジング環境で利用しているケースがあります。このような場合、VPNや閉域網、ハイエンドストレージ、セキュリティアプライアンスなど、DC内にさまざまな機器を設置して環境を構築し、安定した運用体制を構築していることがほとんどです。こうした状況で、パブリッククラウド上の環境と既存の環境を接続してハイブリッドクラウド環境を構築しようとすると、装置の入れ替えや運用体制の更新、既存システムの改修などが必要になり、大きな負担となる可能性があります。
また、既存環境でファイブナイン(99.999%)クラスのミッションクリティカルなシステムを稼働させている場合も、同じように高い可用性や高い信頼性をパブリッククラウド環境で構築できるか不安に思う方もいるでしょう。パブリッククラウド上にVMware vSphere 環境を構築するソリューションはベアメタルサーバを占有するかたちで利用しますが、パブリッククラウドのIaaSである特性上、ユーザーがDCに直接出向いて詳細な構成を確認することはできません。
このような課題や悩みを解消しようと、日立製作所が2020年から新しいVMware vSphere ベースのクラウドサービスとして提供しているソリューションが「エンタープライズクラウドサービス G2」です。
日立製作所では、顧客のさまざまなニーズに応えるクラウドサービスを「Hitachi Cloud」として提供しています。Hitachi Cloudの特徴は「高信頼性の追求」「パートナークラウドとの密接な連携」「お客さま視点によるコンサルティング」「マルチクラウドへの対応」にあり、顧客が要求するニーズに対して可能な限り応えていくことを基本方針にしています。
VMwareの技術の活用も長い実績があります。2007年には「Secure Online統制IT基盤提供サービス」でVMwareの技術を採用し、2015年にはファイブナインの可用性を実現するミッションクリティカルシステム向けクラウド「エンタープライズクラウドサービス」の提供を開始しています。
また、VMwareとミッションクリティカル分野の協業を拡大するとともに、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などの主要パブリッククラウドベンダーとの協業も強化してきており、2020年にはAWSのパブリッククラウド上にVMware vSphere 環境を構築する「Hitachi Managed VMware Cloud™ on AWS」も提供を開始しました。
今回紹介する、新しい「エンタープライズクラウドサービス G2」は、VMwareとの密接な連携のもとで提供されるマネージドクラウドサービスとなります。日立製作所が提供するDC上にVMware Cloud™ を構築するためのハードウェアとソフトウェアを配置し、日立が構築から運用までを担います。これにより、プライベートクラウドあるいはパブリッククラウド上のVMware vSphere 環境では解消できないさまざまな課題に応えていきます。その特長は次の項で解説します。
エンタープライズクラウドサービス G2の特長は大きく3つあります。
まず特長の1つとして、VMware Cloud Verified 認定を受けたVMware vSphere ベースのパブリッククラウドとして「容易な操作性」を実現しています。具体的には、セルフサービスポータルとなる統合管理ポータル「VMware Cloud Director®(旧称vCloud Director for Service Providers)」を活用して、リソース変更などクラウド環境の操作をユーザーが自由に行うことができます。
ハウジング環境でVMwareの仮想環境によるプライベートクラウドを管理する場合、きめ細かな運用を実現できる一方で、ハードウェアやハイパーバイザーといったインフラ部分の運用のために専任の担当者が必要になるなど運用負荷が高くなりがちです。また、AWSやAzureのようなパブリッククラウドサービスを利用する場合、運用負担を日立に任せることができますが、きめ細かな運用管理をユーザー自身で行うことは難しくなります。
これらに対し、エンタープライズクラウドサービス G2では、IaaSとしてインフラのメンテナンスを日立に任せながら、仮想マシンの構成やネットワークなどのユーザー側で管理したい項目をセルフサービスで利用できるようになります。
運用のしやすさを重視した「信頼性・運用サービス」も特長です。マネージドクラウドであるため、定期的なメンテナンスや監視、障害対応など、クラウドの安定稼働を行うために日立の技術者が対応します。また、Hitachi Cloudとして提供している「モニタリングサポートサービス」「オペレーション代行サービス」「運用サービス」なども併用できます。
クラウドに対するユーザーニーズは千差万別ですから、日立がこれまでに提供してきたさまざまなサービスを組み合わせることで、どのような要件にも応えられるようになっているのです。
IaaSでありながら、トラフィック課金のないシンプルな価格体系を採用しています。また、VMware Cloud Director で任意にリソースを変更できるうえ、必要最小限の構成に最適化することで導入・運用コストを低減することもできます。
エンタープライズクラウドサービス G2は、日立ならではの高信頼はそのままに、柔軟かつ自由な運用で変化に強いシステムを実現する
こうした特長を活かすことで、ハウジング環境に機器を設置したまま、エンタープライズクラウドサービス G2と連携させてハイブリッドクラウドを構成したり、ミッションクリティカルな要件に対応した高信頼・高可用なシステムを稼働させながら、アジャイル開発やクラウドネイティブ技術を使った新しいサービスの開発を推進したりといった取り組みを実践できるようになります。
日立のデータセンターサービスと組み合わせることで、専用機器のハウジングや特定のネットワークとの接続などの要件に対応し、必要な時に利用できるクラウドの利点を最大限に生かしたパブリッククラウドとして活用することができるのです。また、日立として初めてVMware Cloud Verified 認定を受けたサービスであり、VMwareが提供する最新テクノロジーを活用するためのプラットフォームでもあります。
エンタープライズクラウドサービス G2は、提供されはじめてから間もないものの、導入して効果を確認する企業も現れ始めています。例えば、ハウジング環境で専用機器を利用しながらクラウドを活用したり、サービスポータルでの操作性の高さを活用して運用管理コストを低減したりしています。
このように、エンタープライズクラウドサービス G2は、日立のデータセンターサービスを始め、Hitachi Cloudのもつ豊富なサービスと組み合わせて利用することで、顧客のクラウド活用を支援し、高度化することに貢献していきます。
エンタープライズクラウドサービス G2をHitachi Cloudの多彩なサービスと組み合わせて利用することでクラウド活用を高度化