VMware Cloud™ on AWSやAzure VMware Solution(以下、AVS)では、VMware vSAN™(以下、vSAN)を使ってデータストアを構成するのが基本ですが、さまざまな制限事項によって容量増設ができず、コストが増大してしまう場合があります。そこで注目されるのが、AWSやAzureで提供されるNetApp社のストレージをベースとしたストレージサービスを利用する方法です。それらのサービスが実際に実用的な性能を得ることができるのか、ネットワールドが徹底検証しました。
VMware Cloud on AWSやAVSといったクラウド型のVMware vSphere®サービス(VMware SDDC as a Service)を利用するとき、vSANを使ってデータストアを構成します。言葉を換えれば、VMware Cloud on AWSやAVSでは外部ストレージを利用できないのが仕様となっていました。
ただし、VMware Cloud on AWSやAVS上で提供されるvSANデータストアは、オンプレミスのvSphere環境と異なり「ホスト1台あたりのストレージ容量は固定でカスタマイズは不可」、という構成上の制約があります。
このためCPUやメモリは十分でストレージが足りないだけなのにホストをもう1台追加しなければならないといった、無駄なコストが発生する場合があります。
そんなとき検討に値するのが、AWSやAzureが提供しているNetAppのストレージサービスを利用する方法です。
AWSでは、マネージドサービスとして展開されたNetApp ONTAPをSaaSとして利用する「Amazon FSx for NetApp ONTAP」と、NetApp ONTAPをユーザーがIaaS上に展開して利用する「Cloud Volumes ONTAP」が用意されています。
同様にMicrosoft Azureでも、NetApp ONTAPをSaaSとして利用する「Azure NetApp Files」と、NetApp ONTAPをユーザーがIaaS上に展開して利用する「Cloud Volumes ONTAP」が用意されています。
このうちマネージドサービスとして提供されるAmazon FSx for NetApp ONTAPとAzure NetApp Filesについては、VMware ESXi™からのNFSプロトコルによるデータストア利用が正式サポートされているのです。
こうして外部ストレージを利用することにより、CPUやメモリに比較してストレージ容量が大きなストレージ偏重型のワークロードでコストを大幅に削減することができます。NetApp社が提供しているサイジングツールを利用した分析結果によれば、500台のVMに対して500GBのストレージ容量を割り当てたとき、単純にvSANのみでデータストアを構成したケースに対して、vSAN+Amazon FSx for NetApp ONTAPで構成したケースでは約55%のコスト削減、vSAN+Azure NetApp Filesで構成した場合も約43%のコスト削減となります。
AWS FSx for NetApp ONTAPを組み合わせときの価格差
Azure NetApp Filesを組み合わせときの価格差
とはいえ、パフォーマンスが気になる方は多いでしょう。パブリッククラウドのネットワークでNFSマウントした外部ストレージが、実用上問題なく動くのかどうか一抹の不安が残ります。
実際に各クラウドのネットワーク構成を見てみると、VMware Cloud on AWS上でAmazon FSx for NetApp ONTAPをデータストアとしてマウントする場合、2つのルーターを経由することになります。AVSではさらに多く、合計4つのルーターを経由しなければなりません。これは非常に大きな懸念材料となります。
VMware Cloud on AWS+FSx for NetApp ONTAPの構成図
そこでネットワールドが行った性能検証の結果が次のとおりです。
①Amazon FSx for NetApp ONTAP
Amazon FSx for NetApp ONTAPでは、ネットワーク帯域またはIOPsのいずれかが上限に達した時点で頭打ちになる制約があり、具体的には最大2GBpsの帯域または80,000IOPsが理論上の性能要件です。
これを承知の上でボリューム1つの限界値をみたところ、Read/Writeいずれも100%の負荷をかけた状態では、Amazon FSx for NetApp ONTAP の制限から500MB/sのスループットが上限となります。同様にIOPsについても50,000程度で頭打ちとなり、80,000の最大性能を引き出すことはできませんでした。
もっともネットワークのレイテンシーはそれほど問題なく1~2msの範囲に収まっており、2つのゲートウェイを経由する影響はあまりないようです。
しかし、500MB/sのスループットで50,000IPOsしか出ないストレージで仮想基盤を構築するのは心もとないと言わざるをえません。
そこでデータストアの数を現状の上限値である4つまで増やした状態で性能検証を実施してみました。この結果、リニアに4倍とまではいかないまでも性能は着実に向上し、IOPsは150,000近くまで増加することが確認できました。
ただし書き込み性能は1GB/sのスループットで頭打ちとなります。これは複数ボリュームにした際にも存在するAmazon FSx for NetApp ONTAPの上限と考えられます。
②Azure NetApp Files
Azure NetApp Filesはベアメタルのストレージを実装していると言われ、アーキテクチャーの優位性があることから性能面でも期待を持てます。
ネットワーク(ExpressRoute Gateway)およびAzure NetApp Files自体について、性能指標がSLAとして示されている点も安心材料の1つです。
実際に性能を測定すると、IOPsは80,000から100,000近い良好な数値を確認できました。一方で残念なのはネットワークのレイテンシーで、低負荷の段階から2ms以上の遅延が発生します。やはり4つのゲートウェイを経由する影響があらわれているようです。
ただ、この問題にも回避策があります。ExpressRoute Gatewayの最上位プランである「Ultra Performance」でサポートされているFastPath機能を利用すれば、ゲートウェイをバイパスして直接通信することが可能です。これによりレイテンシーが1ms程度改善され、性能も向上することが確認できました。
上記のような検証の結論として、クラウド上のNetAppストレージの性能を次のように評価することができます。
①Amazon FSx for NetApp ONTAP
②Azure NetApp Files
こうした外部データストアのサポートにより、これまでVMware Cloud on AWSやAVSが苦手としていたストレージ偏重型の仮想基盤の移行に際しても、より最適なサイジングや構成が可能となります。また、Amazon FSx for NetApp ONTAPやAzure NetApp Filesの機能を利用することで、クラウド移行やデータ保護、災害対策といった課題も、マネージドサービスを利用して安価かつ容易に解決することができます。
VMware Cloud on AWSや AVSをより幅広いユースケースでご導入いただけるよう、ネットワールドは幅広いサポートを提供しています。ご興味のある方はお問い合わせください。