多くの企業でVMware vSphere®︎によるプライベートクラウド環境を外部のクラウドサービスへ移行する動きが加速しています。国内の主要なクラウドプロバイダーはVMware vSphere環境をそのサービス基盤としており、顧客オンプレミスからのスムースな移行を実現するにはそうしたパートナー企業の存在が欠かせません。一方でユーザーがクラウドサービスに求める要件も年々高度化しており、これまでのいわゆる「仮想化基盤」だけではない、より利便性の高いサービスに関心を寄せています。そこでVMwareでは「VMware Cloud Verified」という認定制度を設け、「VMware Cloud」 をサービスとして提供するパートナーとそのサービスを認定しています。ここではそうした認定パートナーの提供するサービスがユーザー企業にどのようなメリットを提供するのか、ヴイエムウェア クラウドサービス事業部 事業部長 神田靖史が解説します。
――「VMware Cloud Verifiedパートナー」とは何でしょうか。
神田:VMwareのクラウドパートナーコミュニティは、グローバルで128カ国、約4,500社におよび、それらのクラウドプロバイダーパートナーが10,000を超えるデータセンターからサービスを提供しています。日本では2007年からクラウドパートナー制度をパイロットプログラムとしてスタートし、当初3社だったパートナー数も現在では約160社に達しています。全てのクラウドパートナーは、それぞれの特徴を活かしたサービスを提供していますが、VMware Cloud Verifiedパートナーは、その中で、VMwareの「Software Defined Data Center(SDDC)」のアーキテクチャや製品スタックを利用していること、また、SDDCを構築するためのデザイン「VMware Validated Design(VVD)」に基づいたサービスを提供していることを条件に認定されているパートナーです。
言い換えれば、クラウド移行にあたってCloud Verified認定を受けているパートナーのサービスを利用していただければ、どのパートナーを選択してもVMwareが提唱しているSDDCを利用いただくことができるということです。
もちろんCloud Verified認定を取得していないサービスが良くないという意味ではありませんが、160社のパートナーが160通りのサービスを提供している中で、お客様が自身の要件にあったサービスを選択する上では何らかの指標が必要です。ユーザーオンプレミス側のSDDC化がすでに進んでいる中、そのIT基盤のクラウド移行に最も適したサービスとしてCloud Verified認定サービスは、VMwareが提唱するSDDCを実現し、またVVDによる指定バージョンの製品が実装された最新かつ最良のテクノロジーを活用できるサービスとして、非常に高いサービス品質が担保されていると言えます。
――認定パートナー数は何社あるのでしょうか。
神田:Cloud Verifiedパートナーとしては、グローバルでは250社以上、国内では2021年6月時点で約10社ほどが認定を受けており、認定取得パートナーは年々増えてきています。具体的には、日本で認定を取得したパートナーとして、IDCフロンティア、伊藤忠テクノソリューションズ、NEC、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、日立製作所、富士通、富士通クラウドテクノロジーズがあります(50音順)。海外で認定を取得して国内でサービス展開しているパートナーとしては、IBM、NTTデータ、Oracle、Google、Microsoftとなります。
VMwareとして、Cloud Verified パートナーを認定する際には、プロバイダー各社が提供しているサービスについて、事前に利用している製品コンポーネントや組み合わせられるバージョンなどが規定の条件を満たしているかどうか、物理的に環境を構築してサービス提供されているかどうかなどを調査します。確認がとれた場合は、Cloud Verified ロゴをサービスに付加しますので、それが目印になります。
※VMware Cloud Verifiedの詳細ページはこちら
――SDDCについて改めて教えてください。
神田:SDDCは、VMwareが2012年に米国で開催されたVMworldの中で発表したビジョンで、すべてのインフラが仮想化されたサービスとして提供され、さらにこうしたデータセンターの制御が完全にソフトウェアで自動化される世界を目指したものです。サーバの仮想化だけでなく、ネットワークの仮想化、ストレージの仮想化を統合し、ソフトウェアで定義されるデータセンターとして現在ではすでに多くのユーザー企業のIT基盤として採用が進んでいます。基本的な製品コンポーネントとしては、サーバ仮想化基盤ソフトウェアの「VMware vSphere」、ネットワーク仮想化製品である「VMware NSX®︎」、ストレージ仮想化のための「VMware vSAN™」で構成されます。
SDDCの概念は登場してから一貫して変わっていませんが、ハイブリッドクラウド環境やマルチクラウド環境が一般化する中で、SDDCを構成するためのコンポーネント群を「VMware Cloud Foundation(以下、VCF)」と呼ぶソリューションパッケージとして定義して提供されるようになりました。
VCFは、上述のvSphere、NSX、vSANに加え、それらを統合管理するための「VMware vCenter Server®︎」、マルチクラウド基盤管理のための「VMware vRealize®︎ Cloud Management™」、さらにそれらの多様なソフトウェアコンポーネントの導入とライフサイクル及び環境全体に関する幅広い運用項目を管理するための「VMware SDDC Manager」などが含まれます。これらをVVDに準じたアーキテクチャとして構成していくことになります。
いまでは多くのお客様が、オンプレミスだけでなく、複数のクラウドを組み合わせながら使い分けています。A社のクラウドだけを使うというケースは珍しく、B社のクラウドやC社のクラウドを適材適所に併用しながら、自身の目指すプライベートIT基盤を作り上げていく時代になっています。
ただそうしたマルチクラウド環境の利用を、単に複数それぞれのクラウドの特徴から判断して採用していくだけでは、いよいよ既存のオンプレミスのワークロードをクラウドに移行しようとした際に膨大な作業と期間とが必要となってしまう場合が多いです。その際に、VCFを基準としてマルチクラウド環境を構成すれば、クラウドへの移行や、クラウドから別のクラウドへの移行を容易に行うことができるようになるのです。
――ユーザー企業の立場からはどのようなメリットがありますか。
神田:お客様の視点でみると、Cloud Verified 認定パートナーを選択するメリットは次の5つに整理できるでしょう。
1. 高い水準の品質を担保したサービスが受けられる
2. 製品コンポーネントの互換性が保証されているため、プロバイダーの枠を超えてワークロードをクラウド移行できる可搬性が得られる
3. 高い水準の品質を担保されたうえで、プロバイダーごとの「地の利」を生かしたサービスを付加価値として利用できるようになる
4. 将来にわたって高い水準を維持したサービスの提供が保証される
5. コンテナを使ったアプリケーションのモダナイゼーションといった将来展望が描きやすくなる
なおVMwareは、AWS(Amazon Web Services)との共同開発である、「VMware Cloud on AWS」を2018年から提供しています。また Microsoft、Google 、IBM、Oracle とも協業して、パブリッククラウド上でSDDC(VCF)を構成できるサービスも提供されています。具体的には、「Azure VMware Solution」「Google Cloud VMware Engine」「IBM Cloud for VMware Solutions」「Oracle Cloud VMware Solution」です。こうしたハイパースケーラーが提供するVMwareのソリューションもCloud Verifiedに認定されています。
一方で、ハイパースケーラーではない、日本国内の地の利を生かした、きめ細やかなサービスを得意としているプロバイダーも数多く存在します。そうしたプロバイダーを利用する際に、Cloud Verified パートナーを選択すれば、ハイパースケーラーと同等の水準を持ったVMwareのサービスを受けられることになります。
VCFをコアとして、その周辺を構成する関連コンポーネントも拡張されており、例えば近年注目されているところでは、コンテナ関連製品である「VMware Tanzu™」や、テレワークなどでニーズの高まっているデスクトップ仮想化製品「VMware Horizon®︎」などがあり、これらを搭載したサービスを提供するパートナーを選択することも可能です。
――VMware Cloud Verified について今後どのような取り組みを行う予定でしょうか。
神田:現状では、まだ「VMware Cloud Verified」という認定制度も、また認定を取得されたパートナーのサービスも、お客様に十分に認知されているとは感じられていませんが、上述したように、Cloud Verified パートナーのサービスを利用することは、お客様にとってさまざまなメリットがあります。特に、次世代のアプリケーション基盤を構築するためのロードマップを描きやすくなるというメリットは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを推進するうえでも大きく役立つでしょう。
また、パートナーにとっても、自社が提供するクラウドサービスの付加価値を高め、お客様に安心してクラウドサービスを利用していただくための保証にもなります。
今後はCloud Verified認定を取得するパートナーにとっても、またそのサービスを利用されるお客様にとっても、この認定制度によるメリットを強化し、そしてより使いやすい制度へシフトさせることも視野に入れながら、この価値を広く訴えていきたいと考えています。
インタビュイー
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クラウドサービス事業部 事業部長
神田靖史
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