基礎から学ぶ

2023-04-03

現実解「クラウドスマート」の威力、クラウド移行の最適解とその手順とは?

By 株式会社インターネットイニシアティブ

IT運用コストと運用負荷軽減これからクラウドへ取り組むハイブリッド クラウドクラウド移行

企業ITシステムのクラウド移行が進む中、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展も相まって、パブリッククラウドの活用が進んでいる。一方、オンプレミスのワークロードも残り、企業はハイブリッドクラウド形態の中で、ITインフラの「最適な移行先」を選定することの重要性が増している。そこで、「適材適所のクラウド利用」=「クラウドスマート」を実現するためのクラウド移行の考え方はどのようなものかを解説する。

ITインフラ適材適所のクラウド活用の時代へ

 企業のITインフラのクラウド移行が進み、「クラウド活用」は当たり前となっている。既存のレガシーシステムなどを中心にオンプレミスの利用は残りつつ、大半のシステムは何らかの形でクラウドサービスを利用しており、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどの外資系のクラウドサービスについても、抵抗感なく受け入れられているのが現状だ。

 さらに、DXの潮流も相まって、従来のITインフラ(IaaS)のクラウド移行のニーズに加えて、「新たな」領域でのビジネス価値創出に向け、柔軟性や俊敏性といったメリットを享受すべく、さらなるクラウド活用に期待が集まっている。

 しかし、現実にはまだまだ多くの資産がオンプレミス上にあるのが現状だ。インターネットイニシアティブ(IIJ)が2021年7月に公開した『全国情シス実態調査 集計レポート』によれば、サーバの50%以上をクラウド化したと回答した企業は20%以下と、クラウド活用が進んでいる国内企業でも、多くはオンプレミスとパブリッククラウドが併存する「ハイブリッドクラウド」形態であることがうかがえる。

まだまだ多くの資産がオンプレミスに
まだまだ多くの資産がオンプレミスに

 スピーディにITインフラ、サービスを調達、リリースできる点や、AIなどの機能、サービスを利用できるクラウドのメリットを享受しつつ、「適材適所」で活用していくことが、これからの企業ITインフラには求められているといえる。では、「適材適所」の具体的な環境とはどのようなものだろうか?本稿で解説する。

オンプレミスの移行先としての次世代IaaSとは

 これまで以上に「適材適所」が求められる状況を受け、インターネットイニシアティブ(IIJ) クラウド本部クラウドサービス1部 副部長の山本 岳洋 氏は、オンプレミスの移行先を担うサービスとして「IIJ GIO インフラストラクチャー P2 Gen.2」(IIJ GIO P2 Gen.2)を紹介した。

山本 岳洋 氏
インターネットイニシアティブ(IIJ)
クラウド本部クラウドサービス1部 副部長
山本 岳洋 氏

 IIJ GIO P2 Gen.2は、仮想化基盤「VMware vSphere」 ベースのプライベートクラウドの特徴を生かしつつ、パブリッククラウドのメリットを最大限享受できるようデザインされた新世代のIaaSだ。山本氏は「企業に継続して利用してもらえるような新たなアーキテクチャで提供するものだ」と説明した。

継続利用に資する特徴は次のとおりだ。

(1)ロケーションやハードウェア・ソフトウェアのサポート終了対応からの開放
(2)開発体制だけでなく調達、物理設計から業務・工程を見直し、稼働率を向上
(3)オンプレミスやパブリッククラウドとの高い移行性

 VMwareのテクノロジーを活用することで、オンプレミスからの移行性が高く、仮想基盤のバージョンアップやライフサイクル対応はIIJが行うため、運用保守から解放されるのが特徴だ。山本氏は「お客さまはvSphereなどのバージョンアップは意識せずリソースを利用可能で、リソースの割当は自由で、既存環境のVMの移行も可能だ」と説明した。

コアとなる仮想リソースプール
コアとなる仮想リソースプール

 また、インフラ部分はテナントからは抽象化されており、企業はロケーションや運用をしなくてよい設計となっている。山本氏は「vSphereを用いる点がクラウド移行のニーズに応える最大のポイントだ」とする。既存のワークロードをそのままマイグレーション可能で構成変更が不要、L2延伸などのネットワークサービスと併用することで「IPアドレスの変更すら不要」だということだ。

 さらに、マネージドKubernetesサービスやエッジ活用など「vSphereならクラウドネイティブなアプリケーション開発など、将来的な機能拡張も視野に入れることが可能だ」と山本氏は話した。

IIJが移行作業・移行支援するソリューションも提供

 また、仮想マシンの CPU、メモリとして使用できるサーバリソースプールは、「1つの仮想マシンあたり、最大16vCPU、192GBまで設定が可能」(山本氏)だ。サーバリソースには仮想ディスク作成用の暗号化されたストレージ領域(ブロックストレージプール)が付与され、たとえば、「仮想マシンに複数ストレージをアタッチ」することや、「仮想マシンのサーバリソースやストレージリソースを拡張」することも柔軟に実行できる。

 設定などは管理者用のコントロールパネルから行える。山本氏は「お客さまが意識するのはCPU・メモリ・ストレージ容量とサービスレベルのみで、契約したリソース内で自由に仮想マシンを構成可能だ」と説明した。

 移行方法は次の3つの方法があり、さらにIIJが移行作業・移行支援するサービスも提供している。

(1)VM Import(仮想マシンをインポートするツール)による移行
(2)シンプルバックアップサービス による移行
(3)VMware Cloud Director Availability(VCDA)による移行

 山本氏は拠点間接続が行いやすいL2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)を利用したレイヤ2ー接続が可能な点を挙げ、「L2延伸による移行や、L2延伸によるハイブリッド利用も可能だ」と述べた。

「クラウドファースト」から「クラウドスマート」へ

 山本氏は、「現状、企業ITのすべてをクラウドネイティブなアーキテクチャにするのは難しい」とし、「何らかの形で既存システムをクラウド移行する場面が出てくる」と述べた。すなわち、「クラウドファースト」からクラウドを適材適所で活用する「クラウドスマート」の考え方が重要であるとした。

 既存システムのクラウド移行パターンは大きく2つある。

 1つめは「再構築して移行」するもので、既存のシステム・アプリケーションを新たなプラットフォーム(クラウド)に切り替えるため、システム(OS)を再構築するものだ。山本氏は「OSのライフサイクル対応などと合わせて行うことが一般的だ」と話した。

 2つめは「そのまま移行」するものだ。既存のシステムイメージをツールなどを用いてクラウドに移行できる形にエクスポートし、そのままインポートする方法だ。

 これらの移行パターンに最適解はなく、パブリック・プライベートクラウドにかかわらず「状況に応じて判断できるクラウドスマートにシフトしていくことが重要だ」と山本氏は話した。

既存システムのクラウド移行パターン
既存システムのクラウド移行パターン

 では、どのようにクラウドスマートへシフトするか。その一例として、山本氏は「VCDA(VMware Cloud Director Availability)」を活用した移行について説明した。これは2つめの「そのまま移行」に適した構成だ。「移行元のvSphereはオンプレミスでもクラウドでも場所は問わず、IIJ GIO P2 Gen.2に接続し、そのまま移行が可能」(山本氏)というのがその理由だ。

 また、IIJ GIO P2 Gen.2は、vSphere 環境への移行性や運用性を重視できる点や、従量課金でなく固定課金で利用できるため「予算化がしやすい」点、また、国内クラウド事業者ならではの「為替リスクを最小限にすることができる」点などから、ビジネス要件にマッチした環境を活用・相互接続できることがポイントだ。

「クラウドスマート」な4つの移行パターン

 山本氏は、さらに詳細なシーン別の移行パターンについて示した。

 1つめは「移行性を重視した」パブリッククラウドを併用するパターンだ。オンプレミスの仮想マシンを別の仮想マシンに移行するもの(V2V)はIIJ GIO P2 Gen.2に移行、新たな領域など「パブリッククラウドの機能を活用したいサーバはパブリッククラウドにリビルド」する。そして、仮想ルーターと安価なVPNで総合接続する構成だ。

 2つめは「コスト最適化」のために、固定課金と従量課金のプランを併用するパターンだ。トラフィック量が多いサーバは固定課金の Gen.2を利用、その他のサーバはAWSを利用することで「コストを最適化する構成だ。山本氏はネットワークについて「業務システム間の連携なので閉域接続のDirectConnectで相互接続するのがよい」と説明した。

 3つめは「PaaSとの併用で運用負荷を最小限にする」パターンだ。IaaSとPaaSを使い分け、運用負荷低減と高可用性を実現する。DNS PaaSサービスを活用し、東西のIIJ GIO上にWebサーバを構築、「DNS機能+負荷分散機能をPaaSが担う」構成となる。

 この構成のポイントは、「IaaSでは負荷分散機能の構築や運用管理が大変なため、PaaSにて提供する点」にある。山本氏は「WebサーバはIaaS(IIJ GIO P2 Gen.2)を活用することで、ビジネス要件にあった構成が柔軟に行えると説明した。

 そして、4つめは、「オンプレミスとのハイブリッドクラウド」のパターンだ。IIJ GIO P2 Gen.2上にクラウド化可能 なサーバを構築。クラウド化に向かないサーバ群はハウジングスペースを利用することで、低遅延でオンプレミスとのハイブリッドクラウド環境を構築するものだ。

 ネットワークは、IaaSとDCラック間は10Gbps/L2のコネクタで接続する。この構成のポイントは、クラウド化できない要件があるサーバはハウジングサービスを利用することで可能な限り運用負荷を低減する点にある。さらに、IaaSとDCラック間を10Gbps/L2のコネクタで接続することで「クラウドとの確実な連携が可能になる」と山本氏は話した。

オンプレミスとのハイブリッドにも対応
オンプレミスとのハイブリッドにも対応

 山本氏は、IIJのサービスプラットフォームは「AWSやMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)など代表的なパブリッククラウドとの連携ハブとして機能する」と話した。

 また、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」や、GDPR(EU一般データ保護規則)に関わる個人データの域外移転を許容された事業者としてBCR(Binding Corporate Rules)認証、企業等の越境個人データの保護に関して、APECプライバシー原則への適合性を認証するCBPR(Cross Border Privacy Rules)認証を取得している点も挙げ、「企業のコンプライアンス対応負荷を軽減する」ことが可能だとした。

 さらに、山本氏は将来的には5Gなどのモバイルネットワークも積極活用することで、「コアとエッジの連携やVMベースのワークロード、アプリケーションコンテナベースのアーキテクチャ採用など、IoTや自動運転、スマートシティに至るまで、さまざまなユースケースに対応していきたい」と述べ、「オンプレミスとパブリッククラウドとの高い移行性によって、クラウドスマート」時代のマルチクラウドのハブとしてIIJを活用してもらいたい」とまとめた。

※ この記事はWeb「ビジネス+IT」に掲載された内容の転載です。

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